2025 年を象徴するのは、単一のモデルのリリースではなく、AI を本番環境で運用しやすくなったことです。モデルの計画力、ツールの使用能力、長時間にわたるタスクへの対応力が向上し、「ステップごとにプロンプトで指示する」方法から、エージェントに仕事を任せる方法へ移行するチームが増えました。
開発者にとって、この変化は次のような形で具体的に表れました。
- 推論が主要な調整項目となり 、汎用チャットモデルとの統合が進みました。
- マルチモーダル対応(文書、音声、画像、動画) が、API の中核機能になりました。
- エージェント構築のための基本要素 (Responses API、Agents SDK、AgentKit)により、複数ステップのワークフローをリリースし、運用しやすくなりました。
- Codex によって、これまで以上に速く、質の高い開発が可能になりました。
要点
- 大きな変化は、 エージェントを前提に設計された API と、推論やツールの使用を必要とする、より複雑なタスクを実行できる 高性能なモデル の組み合わせです。
- Codex はモデルとツールの両面で成熟しました。GPT-5.2-Codex のリポジトリ全体を対象とする推論と、本番運用に対応した CLI、Web、IDE のワークフローを組み合わせ、長時間にわたるコーディングタスクに対応しました。
- ツールの改善により、モデルと実際のシステムを連携させる際の煩雑さが減り、接続しやすくなりました。
- マルチモーダルな入出力(PDF、画像、音声、動画)が、エンドツーエンドのワークフローで実用的な標準になりました。
- 評価、評価器、チューニング機能が成熟し、「測定 → 改善 → リリース」のサイクルをより安定して繰り返せるようになりました。
ここからは、2025 年のモデル、API、プラットフォームの主要な更新を振り返り、本番運用に耐えるエージェントのリリースにどう役立つかをご紹介します。
推論:独立したモデルから統一されたモデル系列へ
2024 年末、モデルに「考える時間」を与える 推論 というアプローチを初めて導入しました。それに続く 2025 年初頭は、 リーズニングモデル が独立したモデルファミリーとして存在していた時期です。 o1、 o3、 o4-mini などのモデルは、回答前の思考に追加の計算資源を使うことで、複雑で複数のステップを伴う作業の信頼性を大幅に高められることを示しました。
また、 o3-mini は、推論がフロンティアモデルだけの機能にとどまらず、コスト効率が高く、開発者にとって使いやすい形でも提供できることを早い段階で示したモデルの 1 つです。
2025 年の半ばから後半にかけて、大きな流れとなったのは 統合です。深い推論、ツールの使用、質の高い会話が、同じフラッグシップモデル系列に集約されていきました。多くのチームにとって「モデルを選ぶ」とは、根本的に異なるファミリーを選び分けることよりも、コスト、レイテンシ、品質のトレードオフを判断することになりました。
o1、o3 / o4-mini、o3-mini など、推論を重視したモデルの登場によって、開発者は「より深く考えるか、より速く応答するか」を調整できるようになりました。その後、年内を通じてこうした考え方が GPT-5.x ファミリーに取り込まれ、汎用的な知能、深い推論、コーディングへの特化、マルチモーダル対応が、単一のモデル系列に統合されていきました。
マルチモーダル対応:音声、視覚理解、画像、動画
2025 年末には、 マルチモーダル という言葉は、単に「画像を入力できる」という意味から、「複数のモダリティを横断する製品をエンドツーエンドで構築できる」という意味へと変わりました。しかも、多くの場合、単一のワークフローで実現できるようになりました。
音声とリアルタイム処理
- 次世代の音声モデルでは、音声の文字起こし精度が向上し、音声合成をより細かく制御できるようになりました。これにより、本番運用に耐える音声処理パイプラインの構築が支えられました。
- Realtime API が一般提供となり、低レイテンシの双方向音声ストリーミングが可能になりました。これにより、リアルタイムで動作する音声エージェントや会話型インターフェースの本番運用が現実的になりました。
画像
- GPT Image 1 は、新世代の画像生成モデルとして登場しました。現実世界への深い理解と向上した指示追従能力により、高品質な画像生成と構造化された編集を実現しました。
- 入力への忠実度が高まり、画像を編集する際に顔やロゴなどの細部をより安定して保持できるようになりました。
- GPT Image 1 mini により、ネイティブな画像生成のコスト効率が向上しました。
- OpenAI の最も先進的な生成モデルである GPT Image 1.5 は、画像品質と編集の一貫性を飛躍的に向上させました。
- Responses API のツールとして画像生成が利用可能になり、複数ターンの会話の中で、ほかのツールと組み合わせながら画像を作成できるようになりました。
動画
- Sora 2 と Sora 2 Pro モデルにより、時間的な一貫性が向上し、リミックスにも対応した、より忠実度の高い動画生成が可能になりました。
- Video API は
v1/videosを通じて動画の生成と編集を提供し、動画もテキスト、画像、音声と並ぶ API の主要なモダリティになりました。
PDF と文書
- PDF 入力により、大量の文書を扱うワークフローを API で直接実行できるようになりました。
- URL による PDF の指定により、文書をアップロードせずに参照できるようになり、手間が減りました。
開発者にとっての意義: OpenAI プラットフォームを、テキストや視覚理解だけでなく、画像・動画生成のワークフローや音声変換のユースケースにも活用できるようになりました。
Codex
2025 年、Codex は単なるコーディングモデルを超え、ソフトウェアエンジニアとしてチームの一員になりました。モデル、ローカルのツール、クラウドをつなぎ、開発者がより長時間にわたる複雑なコーディングタスクに取り組めるよう支援しました。
モデル
初期のリーズニングモデルは、複数ファイルの編集、デバッグ、計画といった複雑なコーディングタスクで大きな性能向上を示しました。2025 年の半ばから後半にかけて、これらの能力は GPT-5 ファミリーに統合され、GPT-5.2-Codex がコード生成、レビュー、リポジトリ全体を対象とする推論における最新の標準的な選択肢になりました。汎用モデルとは別の存在ではなく、その中で専門性を持つモデルになったのです。
CLI
オープンソースの Codex CLI(GitHub)は、エージェント型コーディングをローカル環境に直接取り入れました。開発者は実際のリポジトリで Codex を実行し、変更を繰り返しレビューしながら、人間の監督のもとでファイルに編集を適用できるようになりました。これにより、日々のワークフローで長時間にわたるコーディングタスクに取り組むことが現実的になりました。
また、スクリプトからの Codex の利用など、繰り返し実行できる自動化パターンが標準でサポートされ、対話的な使い方以外でも Codex を運用に組み込みやすくなりました。
安全性、制御、連携
Codex は実際の開発・リリース現場のニーズにも対応しました。サンドボックスと承認モードにより、人間が処理に関与し続けやすくなりました。同時に、AGENTS.md と MCP のサポートにより、Codex をリポジトリに合わせて調整したり、サードパーティーのツールやコンテキストで拡張したりすることが容易になりました。さらに、CLI を MCP サーバーとして実行することで、Agents SDK を通じた Codex のオーケストレーションも容易になりました。
2026 年 9 月 5 日更新: Codex MCP サーバーは削除されました。現在利用できる連携方法については、移行ガイドをご覧ください。
Web、クラウド、IDE
Codex は CLI に加え、Web とクラウド、IDE 拡張機能でも、長時間のセッションや反復的な問題解決への対応を拡充しました。これにより、対話を通じた推論と具体的なコード変更のサイクルがより円滑になりました。また、チームは CI で Codex Autofix を使い、ワークフローの一部を自動化できるようになりました。
開発者にとっての意義: 2025 年末には、Codex は「プロンプトを送るモデル」というよりも、推論能力を持つモデルと開発者が普段使うツールを組み合わせた、コーディングのための作業環境として機能するようになりました。
プラットフォームの変化:Responses API とエージェント構築の基本要素
2025 年のプラットフォームにおける最も重要な変化の 1 つは、 エージェントを前提に設計された API への移行でした。
Responses API により、次のような機能を通じて、次世代のモデルを活用した開発が容易になりました。
- 異なるモダリティを含む、複数の入出力への対応
- 推論の制御と要約への対応
- 推論中の呼び出しを含む、ツール呼び出しのサポート強化
2025 年には、この基盤に加えて、オープンソースの Agents SDK や AgentKit といった、より高水準の構成要素も登場し、エージェントの構築やオーケストレーションが容易になりました。
状態と永続化も、次の機能によって管理しやすくなりました。
- スレッドの永続化と状態の再現を支える会話の状態と Conversations API
- 外部のコンテキストを取り込み、信頼できるツールのインターフェースを通じてアクションを実行するためのコネクタと MCP サーバー
開発者にとっての意義:複数ステップのエージェントや長時間実行するワークフローを構築する際に、独自に実装する連携コードや状態管理の負担が減りました。
強力な基本機能とともに、モデルの有用性を最大限に引き出すための高機能な組み込みツールも導入しました。
ツール:ウェブ検索からワークフローまで
2025 年には、エージェントが有用な作業を安全に行えるよう、標準化された、組み合わせて使える一連の機能をリリースしました。
- ウェブ検索は、最新の情報と引用元を必要とするエージェントに、シンプルな情報取得の基本機能を提供しました。
- ファイル検索(ベクトルストア)は、Responses と構造化出力にスムーズに組み合わせられる、標準のホスト型 RAG 基盤を提供しました。
- Code Interpreter は、サンドボックス化されたコンテナで Python を実行し、データ処理、ファイル変換、繰り返しのデバッグに対応しました。
- コンピューターの使用により、「クリック・入力・スクロール」を繰り返す操作の自動化が可能になりました。サンドボックスと、人間が確認や判断に関わる仕組みを組み合わせて使うことを推奨します。
開発者にとっての意義: 各チームが独自のツール実行環境を一から作らなくても、エージェントが情報取得、計算、操作を確実に行えるようになります。
実行とスケーリング:非同期処理、イベント、コスト管理
エージェントの処理が「単一のリクエスト」から「複数ステップのジョブ」へと移行すると、本番運用を担うチームには、コスト、レイテンシ、信頼性に対応するための基本機能が必要になりました。
- プロンプトキャッシュは、プロンプトの先頭にある長い共通部分(システムプロンプト、ツール、スキーマ)を繰り返し使う場合に、レイテンシと入力コストを削減しました。
- バックグラウンドモードにより、クライアント接続を開いたままにせず、長時間かかる応答を生成できるようになりました。
- Webhook により、「すべてをポーリングする」方式から、バッチ処理、バックグラウンド処理、ファインチューニングの完了をイベントとして受け取るシステムへと移行できるようになりました。
- 利用ティアとモデルファミリーの拡充に伴い、レート制限やワークロードの最適化に関するガイダンスも充実しました。
開発者にとっての意義: エージェントの構築では、プロンプトと同じくらい、非同期処理、イベント、予算を含むシステム設計が重要になりました。
オープン標準とオープンソースのエージェント構築基盤
2025 年は、API の統合とともに、エージェント型システムの 相互運用性と組み合わせやすさ を重視した年でもありました。
- Python(GitHub)と TypeScript(GitHub)向けのオープンソースの Agents SDK は、ツール使用、ハンドオフ、ガードレール、トレーシングのための実用的な構築基盤を確立しました。また、 特定のプロバイダーに依存せず、OpenAI 以外のモデルを利用する方法もドキュメントに記載されています。
- AgentKit は、リリースと改善をより速く進めたいチームに向けて、Agent Builder、ChatKit、Connector Registry、評価ループなど、エージェント開発を支える高水準のツールを追加しました。
- 標準化の面では、OpenAI は AGENTS.md (仕様)を推進し、AAIF (Agentic AI Foundation) に参加しました。エコシステムでは、Model Context Protocol (MCP) やスキルといったほかの標準も整備されました。共通の規約への統一が進むことで、開発者はエージェント用ツールを別の環境へ移しやすくなり、個別の連携実装も減らせます。
エージェントや関連標準への取り組みに加えて、Apps SDK も導入しました。これは Model Context Protocol (MCP) を拡張し、開発者が MCP サーバーとあわせて UI を構築できるようにするオープンソースのフレームワークです。ChatGPT などのクライアントで動作するアプリケーションのロジックと、インタラクティブなインターフェースの両方を定義できます。
開発者にとっての意義:単一の実行環境や UI への依存を抑えたエージェントを構築でき、OpenAI を活用したエージェントを、異なる技術が混在するシステムにも組み込みやすくなります。
オープンウェイトモデル
OpenAI はホスト型 API に加えて、高い推論能力と指示追従能力を維持しながら、透明性の確保、研究、オンプレミスやセルフホストでのデプロイを目的とした オープンウェイトモデル をリリースしました。
- gpt-oss 120b & 20b:セルフホストやオンプレミスでのデプロイ向けに設計されたリーズニングモデル
- gpt-oss-safeguard 120b & 20b:gpt-oss と併用するための、安全性とポリシーに関するモデル
評価、チューニング、安全なリリース
- 評価駆動開発のための Evals API
- プログラムで定義できる評価器を使った強化ファインチューニング(RFT)
- 大きなモデルでタスクを検証した後、その品質をより小さく低コストなモデルに引き継ぐための教師ありファインチューニング/蒸留
- 評価器とプロンプト最適化ツールにより、チームは「評価 → 改善 → 再評価」のループをより効率よく回せるようになりました。
まとめ
2025 年を通して、開発者が OpenAI のプラットフォームでより簡単に開発とリリースを進められるよう、次のテーマに一貫して注力しました。
- 中核機能としての推論の大規模化と制御性の確保
- エージェントを前提に設計された統一的な API
- オープンな構築基盤と、整備が進む相互運用性の標準
- テキスト、画像、音声、動画、ドキュメントにわたる充実したマルチモーダル対応
- 評価、チューニング、デプロイを支える本番運用ツールの強化
タスク別の推奨モデル(2025 年末時点)
新規開発を始める場合や既存の連携を刷新する場合は、タスクに応じて次のモデルを最初の候補にするとよいでしょう。
- 汎用(テキストとマルチモーダル): チャット、長いコンテキストを扱う作業、マルチモーダル入力には GPT-5.2
- より深い推論や信頼性が重視されるワークロード: 計画立案や、計算量を増やしてでも品質を高めたいタスクには GPT-5.2 Pro
- コーディングとソフトウェアエンジニアリング: コード生成、レビュー、リポジトリ全体を対象とする推論、ツールを使うコーディングエージェントには GPT-5.2-Codex
- 画像生成と編集: より忠実度の高い画像生成や繰り返しの編集には GPT Image 1.5
- リアルタイム音声: 低レイテンシの音声変換やリアルタイムで応対する音声エージェントには gpt-realtime
提供状況とティアに関する最新情報は、公式のモデル比較ページをご覧ください。
これらのアップデートが、次の展開の基盤となります。2025 年も私たちとともに開発に取り組んでいただき、ありがとうございました。2026 年に皆さんが何を生み出すのか、楽しみにしています。
リンクとリソース
- プロンプト最適化ツール
- モデル比較(現在の名称、提供状況、ティア)
- Agents SDK(Python)と Agents SDK(TypeScript)
- Codex ドキュメントと Codex CLI の GitHub
- 画像 Playground
- プラットフォームの変更履歴(リリース内容と時期)